人災絶頂期

絶対三日坊主宣言

星自体を好きだと思ったのはいつ頃だろう。というか、星を好きになりたがったのは、いつだったのだろう?

元から星が好きだったのかもしれないし、星を好きになりたい、と思って好きになったのかもしれない。一体、いつからこんなに、光るものや星や月たちを好きになったのだろう。わからない。

そういえば、昔から蓄光は好きだった。いつ頃だったかも覚えていない子供の頃だが、妹と、なんらかのクジを引いて、なんらかの景品を交換した。気がするのだが、妹に確認を取ったところ、その覚えはないそうだ。でも、その時に交換した四葉のクローバーの蓄光キーホルダーは、確かにあったと二人で話をしている。その頃から、とにかく私の記憶では、交換してもらうくらい、蓄光のボンヤリとした光が好きだったのだろう。

意識をして星自体を好きになったのは、恐らく宇宙兄弟を読んでからだ。宇宙兄弟に出てくる二人、兄の「南波 六太」と弟の「南波 日々人」は、幼い頃から貪るように宇宙についての知識を調べ、身につけていた。宇宙に行く、と決めた時から、その知識だけを、一心に。

羨ましかった。そんな人間いる?いるんだろうなあ。でもほら、夏休みは毎日のようにJAXAに通っていたとか、三日間かけて京都まで自転車で行ったとか(その後、成長した日々人は月を目指さない兄・六太に「月にも三日で行けるんだぜ。そう思うと、もう届かない距離じゃないだろ?」と言ったりする)、羨ましいじゃあないか。

言い換えれば自分にもそんな経験がなくはないかもしれないけれど、やっぱり、羨ましかった。星や地球、宇宙に関する知識ってのは、やっぱり遠くて壮大だった。夏休みに入り浸ったどこかがあるのも青春ぽかった。合唱団の練習にばかり行っていたから、学校以外に行くところを知らなかったし。

星の知識は、少しでも知っていればロマンチックな気分になれる。日常に対するスパイスのように、私からすれば、お洒落の種類の一つだ。

そして、星を好きになりたい、と望んだ。
星を好きになった。
それが結構、愚策だった。

まず、とんでもなく難解だ、と結論した。私にとって星の話は、今も昔も難しい。専門の書なんかも図書館にはあったが、好きになるのには、少しばかり向いていなかった。好きになってもいないのに知識を貪り食らうなど、到底無理な話だと私は諦めてばかりいる。

第二に、そもそも星が見えなかった。
私の住んでいた家は決して都会じゃないものの、国道が近く夜も明るいため、オリオン座くらいしか分からなかった。冬の夜、形をハッキリと主張しているオリオン座だけは、私の味方だった気がする。星の羅列を眺めても、アプリで位置を確認しても、全く実感が湧かないくらいに見えなくて、私は輝かしいLEDを憎んだものだ。

引っ越した後、私は夜空を取り返した。駅から10分遠くなるだけで、ここまで光が見えるとは。思ってもいなかった夜空の歓迎に、私はここでも生きていけるかもしれないと強く感じていた。かもしれない。多分。

星を好きになったことは、今でも愚策だったと思っている。星に関連した文房具やバスボム、紅茶なんかをすぐに買ってしまうし、星の写真や宇宙の本も欲望の対象だ。夜空が見えやすくなった分、分かりたい星も増えてくる。蓄光に関してもそうで、夜に光る!というだけで買ったものの数知れず、だ。近くにプラネタリウムの文字があると、探して入るまで全ての時間を潰さずにはいられないし、部屋用に買ったプラネタリウムは星が見える故に今は埃をかぶっている。

いいんだ、それでも。どこかで星がそう言っている。
それで人生が豊かになるなら、いくらでも星を好きでいていいのだと、多分、私の大半は星の教訓で出来ていることを、星はまた、なんとなく教えてくれている。

さて、星といえば。皆さんはもう、「星の街」として有名なシュテルンビルドには行かれただろうか?まだであれば、急いだ方が良いだろう。星の街に住むヒーロー達は、まさに輝き続ける恒星だ。しかし、そんな彼らが生み出し続ける物語は、一瞬で流れ去り消えていくほうき星のような短命性を持って、あなたを魅了する。黒いソーダ水を飲み込んだような、胸いっぱいのきらめく心のお話が、輝ける星の街・シュテルンビルドで待っている。
詳しくは、タイガー&バニーを要チェックだ。

そう、話の途中に出てきた「宇宙兄弟」が何かと気になる人もいるだろう。読んで字の如く、宇宙を目指して人と生き、地上に立って月面で歩く兄弟二人の話である。具体的な宇宙に関する知識はなおのこと、人との触れ合いや成長といった私達全員に該当する様々な日常が、全人類の期待を背負う「宇宙飛行士」の非日常を作っているという側面を強く描いている。アニメ版は一度完結しているが、本編はそこから更に、留まることのない宇宙の可能性を描いている。子供の頃に考えた宇宙の始まり、その答えが、きっと貴方の中に眠っているだろう。
詳しくは、宇宙兄弟を要チェックだ。

決して平田広明の回し者ではない。決して。ちらちらと瞬く星の息吹は数百年前から、私達の視線を受けた光は数百年後の世界まで。壮大な未来に期待はできなくとも、明日も星が光っている世界を思うと、少しだけ夜も眠りやすくなりそうだ。星の話でした。